●「健康にやさしい漆喰」
  −日本漆喰工業会西日本部会部会長

 田中石灰工業椛纒\取締役 田中 誠二郎
 健康住宅・自然素材・ホルムアルデヒド等の文字・言葉が、新聞紙上やテレビ等マスコミで大きく取り上げられている今日この頃です。
 古くは江戸時代より使用された漆喰が、時代の変遷とともに、乾式工法に変わり長い冬の時期を過ごしてきた現在、再度漆喰が見直されて大きな注目を集めています。
 近年、健康問題が大きくクローズアップされ、有害物質・有害ガスの発生がない塗り壁材を求める声が大きくなり、各社が競って健康素材への取り組みを始めました。
 漆喰は、古来より「燃えない壁」・「呼吸する壁」として、城郭から一般住宅に至るまで、広範囲に使用されてきました。
 漆喰の持つ重厚さ、風合いは住む人にやすらぎを与え、快適な住空間を形成します。漆喰の持つ性能は、断熱・保温・調湿・遮音・防火等優れた性能を具備しており、他に類を見ない塗り壁材です。
 最近では、各社の研究開発により、簡単に施工できる漆喰も開発されております。今、健康問題の提起とともに、漆喰が大きく見直され、古くて新しい塗り壁材として、各方面からの需要が増大しております。
 こうした折、平成11年9月1日、「日本漆喰工業会」の設立総会が福岡市で開催され、設立の運びとなりました。
 長い間の念願であった漆喰工業会が結成されたことにより、各社の知恵を出し合って、漆喰の啓蒙運動を行い、より良い製品、より住みやすい住宅、また、環境にやさしい住宅を提供していくよう努力したいと念願しております。
 先般、ドイツ・イタリアの塗り壁状況を見る機会に恵まれました。ドイツ・イタリアでは、ほとんどの壁が漆喰を主体とした塗り壁で、洋風建築にマッチしたイタリア磨き等に圧倒されました。
 イタリアの山奥で、古代ローマ時代の石灰窯に出会った時の感動は最高潮に達し、そこに石灰のルーツを見ることができました。
 ローマ時代に端を発した石灰が、現在、毅然として残存し、創意工夫を重ねて社会に貢献しています。
 洋風にも、和風にもマッチする漆喰!
 天然素材を使用し、身体にやさしい漆喰を、更に追求し続け、忘れられかけた工法の普及に努め、社会・業界の発展に寄与できれば幸いです。

建材フォーラム279号(11月号)(工文社,1999)所収,7頁以下