●日本漆喰工業会の発足にあたって
  −日本漆喰工業会東日本部会部会長 宮田石灰椛纒\取締役 宮田 仁郎

 栃木県の石灰産業は江戸時代より、ここ野州において本格生産が始まりました。当時より石灰の製造販売を行っていた業者は、明治、大正、昭和、そして平成へと時代の変化に対応し、さらに発展して現在の石灰企業として、国内有数の生産量を誇り、今日に至っています。その間、昭和に入りドロマイトプラスターが出現し、全国に出荷され一世を風靡しました。しかし、湿式工法の減少にともない建築用消石灰も合わせて今は、大幅な出荷減を余儀なくされてきております。このような情勢の中で、平成11年9月1日、日本漆喰工業会の設立にあたっては栃木県石灰工業協同組合加盟社の中から漆喰に関係する9社が参画し、当組合を東日本部会の事務局として、新たなる活動を開始したところであります。
 そこでまずは漆喰、ドロマイトプラスターの原点に戻って、その品質、施工技術の向上を図るとともに、新製品、新用途開発等にも努めてまいりたいと考えており、現在私達は定例的な会合や、地域社会との関わりをもった勉強会等の推進を図るなど、「漆喰」の普及活動を積極的に進めているところであります。
 さて近頃シックハウスや環境ホルモンと言う言葉をよく耳にします。新築やリフォーム後での揮発性有害化学物質によるイライラ、頭痛、喘息、目の痛み、アレルギー性湿疹、異常行動等が増加していると雑誌や著書でも取り上げています。接着剤に含まれるホルムアルデヒドやシロアリ防虫剤の有機リン系薬剤等が原因と言われ発ガン性も心配されております。それらの問題を解決できる壁材としては、漆喰、ドロマイトプラスターの塗り壁が最も適している材料であると言われております。漆喰には、壁自身が呼吸して調湿と言う優れた機能性を有しています。結露を減少してカビやダニの発生を押さえる等快適な室内環境を提供してくれます。また、外壁に使用すれば、耐水性、耐火性、耐久性等があり、土蔵や城壁、古くはピラミッドや万里の長城、高松塚古墳等で使用され実証されています。最近は健康な住環境を目指した自然素材本物志向から漆喰壁を塗る人が増えてきています。
 このような状況の中で、古代よりのメッセージとして伝えられてきた伝統的な不燃建築材、健康的な自然素材である漆喰やドロマイトプラスターの更なる品質の向上、技術の改善を進めるとともに、健康的な建築文化として後世に継承していくこと、それが私達に課せられた使命であると考えております。
 最後になりましたが、日本漆喰工業会東日本部会の会員各社を紹介させていただきます。何卒宜しくご愛顧の程お願い申し上げます。

建材フォーラム279号(11月号)(工文社,1999)所収,7頁以下