●環境に適した壁材を
−竃L運常務取締役 松田 勝二
我が国の、古来からの建造物を見る時、木舞竹を組み赤土(泥)を幾重にも塗り重ね、貝灰での仕上げを施した壁面が多く、昔の建築に従事される人々は日本の気候風土を良く理解、認識し、高温多湿な我が国に適した建造物を建設されていることには今更ながら感心させられる。
現在では、熱効率をレベルアップさせるとかいいながら密閉形式の建造物が多く、日本のもつ気候に逆行して内壁天井にて結露を促し、カビ、ダニの温床となっている。
確かに乾式工法のよる外部のサイディング、内部のビニールクロス化粧合板は見た目にはきれいで美しく、また、色、デザインも豊富で今時の若者受けはするとしても、それらの製造、施工過程による化学製品によってホルムアルデヒドによるアトピー性皮膚炎等が発症し、健康問題が提起されている。
また、これらを廃棄処分する時点でアスベストの問題、焼却するとダイオキシン発生やシアン系のガスを発生させ、環境問題にも難を示しているようだ。
これらのメーカーも改善に力を注いでいるものの、完璧に解消できたとは言えないのではないでしょうか。
やはり、昔ながらの漆喰壁が健康に良く、環境に優しい素材として、最適ではないでしょうか。
先の乾式の素材とは正反対に、内外壁とも呼吸をし、結露を防止し、カビ、ダニの発生を予防することは密閉型の少々の熱効率のアップには変えられないと思う。
その例として、日本の各地には神社、仏閣、城等、東大寺大仏殿、春日大社、姫路城等、多くの建造物が漆喰の美しさや柔らかさ、そして耐久性までも維持し、我々国民に何かを訴えているように思える。
ただ、最近は漆喰施工の技術者不足や工期的な問題、コスト高という点で元請けやユーザーから、疎遠になっている。その為、簡便な漆喰の代替え、もしくはモルタル塗りにペンキ仕上げという状態で漆喰本来の風合い、深み、重厚さは残念ながら見受けられません。
21世紀を目前にしている今日、日本の位置、気候風土を再認識して、建築に携わる全ての人々の協力と支援を得て、一般ユーザーに対するPR活動を重ね、健康と環境に優しい建造物をつくり出していきたいものです。
建材フォーラム279号(11月号)(工文社,1999)所収,7頁以下
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