●漆喰の復興を目指して
  −糾ロ京石灰工業所営業部長 梶野 耕生

 シックハウスが叫ばれるようになって5〜6年以上経過していますが、一般の人々は「対岸の火事」程度の認識なのでしょうか?地方にいく程、相変わらずクロスや合板等、簡易工事型?の建物が主力を占めています。
 「長年アトピーで悩んでいます。漆喰が体に良いと聞いたのですが・・・」と、相談を受けたのが4年程前でした。この1〜2年でマスコミのエコ建材ブームによる報道が連続してなされ、その結果、こうした切実なご相談が連日続いています。
 漆喰には、不燃、断熱、調湿機能の他、炭酸ガスの吸収とアルカリ成分のため、殺菌効果もある等、他の建材にはない素晴らしい機能を持っています。「シックハウス」が社会問題となってようやく認知された、という不可思議な思いです。しかし、現実は工期が長い、工賃が高い等の理由からでしょうか?健康な身体を取り戻したい、或いは維持したいと、要望される方々以外は「対岸の火事」的な考え方です。施主も業者も早期完成と低価格を目指し、建築が実施されているのが現状のようです。
 高温多湿の気候風土である我が国は大工、左官を中心に、材料の吟味や現場の立地条件、施工時期の気候確認等、熟知の上、施工前〜施工中〜施工後の各工程ごとに細心の注意を払って工事が実施されていた。たっぷりと時間に余裕をもって施工を実施することが実は、建物にとって最良最大の方法であることを、業者の方々もこれから新築を予定される方々も、是非、思い出して頂きたいと願っています。
 言う事が大きいと、笑い飛ばされるでしょうが、漆喰によって醸し出される暖かい癒しの部屋を各家庭に設けることで家庭崩壊の危機が救われると信じます。漆喰の持つ魅力を多くの方々にご案内して子供達の未来に貢献したいと、大袈裟ですが考えています。

建材フォーラム279号(11月号)(工文社,1999)所収,7頁以下